俳句・二月

2.26 春寒や歯痛抱えて頼りなし

燗酒・三句

燗酒や焼きはんぺんの齧りかけ 今日の日は猪口に降り積む燗酒かな 燗酒や笑顔が泣き顔に見えるひと - 大らかでいて快い繊細さを持った方と気持ちの良いお酒を呑んだ。良いお酒だった。

休み前

シャンパン一本で夜を過ごすのは 終わらないはじまりのよう はじまらない終わりのよう 軽やかに絶望し続けるひとが しなやかにくるくると踊っている シャンパン一本で夜を過ごすのは。

詩・居酒屋にて

銀杏の薄皮を剥く指さきに 幽けき水音だけが触る 日曜は、月の無い夜に呑み込まれる 虚を行き来する中央線が おもての暖簾を小さく揺らす 二度と会わないひとたちの 生活のひかりを想像す もう、関係のない、ひとたちの どこかの世界が健やかなることを。 薄…

素描

届かないラブレターの自己陶酔黴びた蜜柑は粉状に散る 失恋の甘さ忘るる大人とは加害者となることを知ること - 言葉にしにくいものが心の奥底に積み上がっている。言葉にできない感情、というのは綺麗だけど、そうではない、誰にも伝わらなくて良いこと、が…

俳句・九月

9.26 すすきの椀焼き椎茸の香りかな 9.27 国葬日カレー屋の小蝿やかましき

日記・晩夏

久しぶりにちょっとゆっくり帰省して、のんびりとできて良かった。家族というのは面白いもの。絶対的なひとつの共同体であると同時に、皆それぞれ別の人間で。 小田原からロマンスカーで新宿に戻ると人でいっぱい。いつもの風景なのに、田舎にいた気分を引き…

俳句・7月

7.29 「稲川淳二」は夏の季語というニュースを見たので句作してみたけど難易度が高すぎる。 (生身魂、は秋の季語らしいけど人魂はその傍題にはならないだろうか) 稲川淳二聞き干されし襦袢かな 人魂や稲川淳二の夜の闇 稲川淳二や恐ろしき人の世よ コンパス…

俳句・六月

6.11 褒め言葉欲する餓鬼か梅雨湿り

俳句・四月

4.24 たくさん届いた柑橘を食べる 春雨や湘南ゴールド剥きし指

俳句・3月

チューリップ掲ぐ幼き手に未来

俳句・新年

1月6日 東京に雪 目に見えぬコロナ真白に流る雪 紹興酒熱め焼豚初雪かな 1月9日 雪は氷に 切れる縁結ぶ縁 ボンゴレの見事な乳化日脚伸ぶ 1月30日 胃と精神の調子が悪い mumを聴く 哀しみの積もりて動けぬ冬深し あお空冴ゆフォークトロニカ蕩け出す

俳句 12月

12.3 (夢の中で作っていた句) 藍色の夜に呑まるゝ鞦韆かな ※鞦韆、はブランコのこと。だけど、春の季語らしいので季節としては変なのだけど如何せん夢の中なので 散紅葉いつもの場所に男なし 短日や口開けの酒場賑へり 割り損ね潰えし銀杏の湿度 12.12 日曜…

俳句・11月

11月8日 親不知を抜く 抜歯後の麻酔残れり細き月 すうると麻酔切れ冬隣る街 金星の鋭く冴ゆる歯の痛む

俳句・十月

10.25 うそ寒し褒め言葉ばかりを欲す

九月後半

9.16 ワクチン接種のからだ撫づ秋の風 街中を揺るるは秋の外来種 金木犀の甘き香マスクの外 デジタルの文字を香るや金木犀 秋麗を貫く鉄骨気高きや 路上のビスケット欠け秋の暮 9.17 曇天の向日葵朽ちて揺るるかな 9.18 台風去るいつもの場所に男あり 取り残…

思い出ししことなど

あのひとはまぁ、元気そうだしいいとして このひともまぁ、元気そうだしいいのかな 心配なのは、あのときのあの子 駄目だよと強く禁止され あの子の欲望はどこへいったのだったっけ 表面を削ると、血液がさっと流れる それに見慣れたあとにまた深く削ると 今…

九月

9.3 秋草やいつもの場所に灯りあり 主なき虚空をまわる扇風機 調律の狂ったピアノ秋あはれ ねむりのかわりの句作り星月夜 きりぎりす鳴き止むやはらかな不眠 漱石の猫と戯れ夜長かな アルバムは未完なるもの白き風 9.6 秋霖にけぶりて明き焼鳥屋 秋雨やねぎ…

日記

今にも夕立が来そうな重い空気の中、タオルケットを買った。素敵なデザインでいて歩きやすいサンダルを買った。春用の布団をコインランドリーで洗濯した。 なんとも生産的ないちにち。(有意義であることを生産的というのか、断捨離を進めることは生産的なの…

俳句・五月終わり

夕暮れの公園にワインとテイクアウトした焼き鳥を持って、夫とふたりでぼんやり過ごした。青い空が少しずつ、雲のグレーとふうわりとしたピンクに満ちて、そのあとぼんやりと月が出て。まわりが薄墨色に沈む中、月だけが硬質にひかっている。焼き鳥の入った…

五月

春のあめ突如ボールペンの最期

四月

マスク越しに花の香りやまた春が

無題

会いたいひとには会わなくては。いつ会えなくなってしまうのか、わからないのだ。 人生の様々な分岐点において影響を与えてくれる人はたくさんいるけれど、今の私の仕事へと導いてくれた大きなきっかけをくれたひと。日本酒への深い愛情。細くも長いご縁であ…

俳句・冬の、終わりかけ

・はんぺんのやはらかに残り冬の月

日記

食べたもの記録アプリを入れて何となくのカロリー制限生活(とてもゆるやかな)を始めて1ヶ月半、アプリ上は何となく毎日カロリー内に収まっているのに(お酒を呑み過ぎた日などは超えてしまうけど、次の日で帳尻を合わせてみたり)ゆるやかな、とは言え全く痩せ…

一月七日

七草や戦争がすぐそこに在る

ぼたん

埋火やすきやき鍋に沈む葱

空想遊園地

色褪せしジェットコースター冬の空 冬うらら回転木馬の頼りなし 冬空や誰かの記憶みたいなけしき 襟巻きに隠すどこへも行けぬ恋 冬ざるるポップコーンの塩気かな 口の端のケチャップ日暮れやすし 錆びついたメロディ淡く空に冴ゆ ゆめみたい、は夢だったね冬…

俳句・冬

食パンの甘やかに焼け日短し 流行りの高級食パンを頂いた。焼いているときの香りが絶品。 ∞ 柚子湯して36度の眠りに入る ∞ 寒紅や新大久保の行列の 歳時記をめくっていて、「寒紅」という季語を知る。寒紅売りなんて存在も知らなかったので現代には中々使わ…

メモ

消毒のゆび清らかに亀鳴くや