詩・居酒屋にて

銀杏の薄皮を剥く指さきに

幽けき水音だけが触る

 

日曜は、月の無い夜に呑み込まれる

虚を行き来する中央線が

おもての暖簾を小さく揺らす

 

二度と会わないひとたちの

生活のひかりを想像す

もう、関係のない、ひとたちの

どこかの世界が健やかなることを。

 

薄皮を剥いだ銀杏は

すっかり黄色くなってしまった

ふやけし指に触るるのは

誰かの誰か、の、ひかりだろうか

あっという間に、

冬は暮れゆく