日記・晩夏

久しぶりにちょっとゆっくり帰省して、のんびりとできて良かった。家族というのは面白いもの。絶対的なひとつの共同体であると同時に、皆それぞれ別の人間で。

小田原からロマンスカーで新宿に戻ると人でいっぱい。いつもの風景なのに、田舎にいた気分を引きずり少しげんなり。若いカップルが手をつないで気だるそうに歩いている。このふたりもまたそれぞれ別の人間。ここにいるひと、それぞれ皆別の人生を生きている。

わかり合えるわけなんてないのに、一緒にいたがるのが人間。なんかそれがスルリとよくわかって快い。わかり合う必要も、わからないことを嘆く必要も、共有する必要もなくて、ただ一緒にいればよいということ。

自宅のマンションに戻ると予想通り夫は楽しそうに酔っ払っていて、おなじ話を何度もしたけれど楽しそうだからまぁ良いか。ひとしきりビールを呑んでこてんと寝た。私は、もうちょっと日本酒を、と思って、夫の好きな菊正宗を手にして、美味しいおさけは世界にたくさんあるけれど、これを呑むと帰ってきたという気分になることに気がついた。お燗して冷蔵庫の蕗味噌とでも食べれば最高なのだけど、お茶碗でひやのまま何も食べず呑む。家族たちが皆たのしそうなので、離れていても寂しくない。宙ぶらりんが心地よい、夜の秋である。