伸びるほど彼のひとの泣くクレマチス

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三鷹駅の中のお花屋さんで、クレマチスを買い求めた。

和名は「鉄線花」。

その名から納得のできるような、くにゃりとしたシルエットでどこまでも伸びる。

葉、枝、時折つぼみ、先に咲く花。

どこへ行くのかわからない、自然ながら不自然なるうつくしい姿。

 

 

かつて、一度だけ見たことがある東京事変のライブで

(「スポーツ」のライブだった。アルバムの曲をくまなく、機械的なほどに正確に演奏するというライブだった。)

椎名林檎が「生きる」という曲をうたった姿を思い出した。

 

会場には、たくさんの女の子たちが。

憧れのひとの姿を目にして涙をしながら彼女の名をしきりに叫んでいた。

もはや、呼んでも届かない場所だから、(だけど)叫ぶ。

 

このひとが十代の少女とき(自身の名前で生きていたとき)、このひとはこんな風に、遠い憧れのひとを求めて呼んでいたであろうのに。

椎名林檎というひとが(実在しない、そんなひとが)

作り出したこの世界とは。

 

林檎は、名を呼ぶ叫びの中で

「身体と心が、離れてしまった。」

と、自らの身体をくにゃりと曲げて

立位の前屈の姿勢で歌い始めた。

 

その不自然な姿勢は

しかし異様なうつくしさを湛えていた。

心細いような声は

しかし、叫びの中で一筋の線になって、曲の終わりへと力強く向かっていった。

 

 

彼女のうつくしさは儚さ、

それを裏打ちするような、ずるい強さ。

女の人は皆、泣きながら生きながらえる。

泣きながら、さいごにはひとりで、終わらない終わりを、生きる。

 

 

 

クレマチス落つノーウーマンノークライ